ラウル・デュフィ展
大丸ミュージアム・東京で開催中の『ラウル・デュフィ展 -美、生きる喜び-』を観に行きました。この展覧会は、ヨーロッパのプライベートコレクション及びビアンシニ=フェリエ社から協力出品される12点の油彩、90余点の水彩、グワッシュ、素描に加え、デュフィがデザインした織物などあまり知られていない絵画以外の業績や参考資料も併せて展覧し、デュフィの華麗な創作の全貌に迫るものだそうです。
~展示構成~
絵画(油彩、水彩、グワッシュ、素描) ファブリック(ファブリックのためのデザイン画、ファブリック)
最初の作品は《旗で飾った船(レガッタの祝祭)》、チケットやチラシを飾る青色の綺麗な作品です。展示室が暗いため青色の綺麗なグラデーションは若干潰れてしまっていますが、その代わりに濃い青色の部分に深みが出ています。3月にエコール・ド・パリの展覧会を鑑賞した時も、この場所にチラシを飾るシャガールの作品がありました。(あの時は、最初、見落としたんですよね・・・(^_^;))ココではこの場所がメインなのかな。確かに展示室に入って正面の最初の作品が宣伝に用いた作品というのはインパクトがあると思います。でもこの展示場所はどうなんでしょう。入り口は混雑しやすいですし、バタバタとしていてイマイチ落ち着かないですしもう少し左右に広がりのある場所で、ソファーに座ってゆったりと鑑賞したいですね。《海と雲》はシンプルだけどとても惹かれる水彩、ポイントは雲。近くで観るとあまり面白くないのですが、少し離れてみると、雲の迫るような立ち上るような迫力、空の青、海の青とのコントラストが際立ちます。これに対し、《カウズ》はとてもにぎやかな水彩。《海と雲》は油彩のようにこってりとした深い色合いであるのに対し、こちらは水彩の特徴を活かした透明感と素早く軽やかな筆さばきがポイント。
「・・・色彩とフォルムが互いに依存しておらず、したがって画家は色彩をフォルムによって、あるいはフォルムを色彩によって制約する必要がない・・・デュフィのフォルムと色彩は一致することをやめ、それぞれが自立性を増していった・・・こうして自立性を獲得することで、デュフィの色彩と線はそれぞれ最大限の効果を発揮することとなった・・・」
《ニース競馬場のパドック》は「これぞ、水彩画☆彡」とでもいうべき透明感のある素晴らしい作品。輪郭線にとらわれない自由な色の置き方は必見!!図録の解説によると「デュフィは色彩とフォルムを別々に扱い、簡略な輪郭線によってシルエットに動きを与えることで、情景に際立った躍動感をもたらしている」とのこと。《スキャパレリでのファッションショー》は水色が全体を覆い、とても動きを感じることの出来る作品。メインとなっている5人がモデルの人たちでしょう。ササッ動いているようなシャープさが全体を覆う水色によって見事に表現されています。《サーカス》はとても面白く印象に残った作品。最初、馬がいっぱいで競馬かと思った・・・(^_^;)どうやら左回りに動いているようです。でも、最初に見たときは右回りに見えまして・・・薄い水色が全体を覆う、透明感のある作品。跳ねるような軽やかな感じ。この作品も、ある程度距離をおいて観るのがおすすめ。
《サルーテ教会》は今展覧会では数少ない優しく暖かな色合いの作品のひとつ。「ヴェネツィアの透明な空の下、建造物群をとりまく絶え間なく変化するハーモニーを持った独特の輝きを、デュフィの繊細な色調が伝えている」とのこと。《三つの川(セーヌ・オワーズ・マルヌ)のための習作》《シャイヨー宮のための習作》は劇場の壁を飾るパネルの習作だそうで、ともにごちゃごちゃしている・・・《三つの~》は左は緑、右は青を主体とし、《シャイヨー~》は緑を主体とするもの。見応えはありそうですが、なんだかとっても目が疲れます・・・・・
《オルフェの行列》は絹織物。こういったデザインをいくつも観ていると、観察力、(写実的な)デッサン力も優れていて、そういったベースの上にあの水彩や油彩が成り立っているということを思い知らされる。そうそう、象を描いたものがいっぱいありました。象さん好きの方にはおすすめかな。《花のコンポジション》は色鮮やかでとても綺麗♪《花と蝶》はきれいだけど目がまわる。《カーネーション》は攻撃的で刺されそうだった・・・(^_^;)《オウム》はかわいいけれど、貫禄十分!!《パリのコンポジション》は「鳥かごを囲むようにバラやユリが咲き乱れるバルコニーから見おろしたパリの『ヴュ・カヴァリエール』(騎乗、つまり斜め上からの図)である」とのこと。赤と青で描かれたこの魅力的な作品はどう表現してよいのかわかりませんが、とても印象深い!!
《青い花瓶の花》《白バラ》《バラの花束》はいずれも綺麗な静物画。《青い~》は花瓶の薄い青に合わせるかのように花のまわりもさっと薄い青が置かれていて、静物画なのに軽やかな(軽快な?)動きを感じました。《白~》は緑が主体で、円を描くように花が配置され、また、円を描くように全体が動いているようにもみえます。ん~~~コーヒーカップの乗り物がまわるようなイメージかな?《バラの~》は無造作に置かれた花束を描いたよう。《青い~》《バラの~》は優しくかる~い自然な感じであまり主張していないので、玄関やリビングに飾りたくなります♪
《紅茶ポットと果物入れの静物画》は左上の紅茶ポットがうちにあるものととてもよく似た色・形をしていたので思わず笑ってしまいました~(^_^)/ポットの丸い形がとても綺麗です♪《荷車の木片》は優しく暖かい、のんびりとした雰囲気の漂う作品。とてもかわいい!!《埠頭のカジノ、ニース海岸通り》はとても幻想的でした♪薄い紫と水色が全体を覆います。とても優しい。この作品(かな?)のリトグラフが美術画廊で販売されていました。(税別で270,000だったような・・・!Σ( ̄口 ̄;;)
《黄色のコンソール》は晩年の最も重要なテーマだそうで、「画面の三分の二を占めるルイ14世様式の重厚なコンソール・テーブルはデュフィのアパートに実在した家具で、装飾を施され曲線を描く脚が、画面に向かって傾けられたテーブル・トップの平坦さや単色と対照的である。・・・・・イエロー・オーカーの淡彩で描かれている本作は、モーツァルトのアレグレットを思わせる。」とのこと。難しいことはよくわかりませんが、ヴァイオリンの優しく柔らかい曲線がとても魅力的♪オーケストラとかヴァイオリンとか黄色を主体とした作品をもっと揃えられたらよかったのに・・・会場全体を見渡した時に、このあたりは物足りなさを感じました。《アスコット競馬場の上品な人々》はペンでスラスラと描いた感じのもので、色がありません。でも、構図等は計算し尽くされた感じがします。これで完成なのか、これから色を置く予定だったのか。どのような色を置く予定だったのでしょう。ちょっと気になります・・・色はありませんが、なにやら楽しくにぎやかな明るい雰囲気が漂っています。
この展覧会は作品数が140~150点ほどあるようですが、それほどたくさんあるようには感じず、サクサクと観ることが出来ました。デュフィの作品は明るい色彩のものが多く、観ているほうも楽しい気分になれます♪デュフィらしい、デュフィならでは、というのはやっぱり水彩ですね!!大胆さと繊細さ、輪郭線にとらわれない自由さ。デュフィは「青は、その明るさにかかわらず個性が変わらない唯一の色です。最も暗い青から最も明るい青まで、多様であっても青は常に青でしょう」と言明していたそうです。デュフィの青色はいいですよ~(^_^)/
- 図録:2200円(書店:2205円)
大丸ミュージアム・東京(http://www.daimaru.co.jp/museum/index.html)
【大阪展】 大丸ミュージアム・心斎橋:2006年4月5日~4月17日
【いわき展】 いわき市立美術館:2006年4月22日~6月4日
【静岡展】 静岡アートギャラリー:2006年6月10日~7月23日
【東京展】 大丸ミュージアム・東京:2006年9月7日~9月26日
この記事へのコメント
ちょっと検索してみたんですが、凄く鮮やかに絵の具を乗せる人なんですね。
雰囲気も軽くて、流石フランス!と思ってしまいました。
りゅうさんの感想と同じく私も「旗で飾った船」の展示位置が?でした。
普通、メインは入り口にないから、「いきなり見せていいの?」という感じ。
しかも思っていたよりずっと小さい絵なので、見逃す人、いますよね。
どの絵も離れて見た方がいいですね。動きが伝わってくる感じがします。
私が好きだったのは、「ル・アーブルの楽隊」と「黄色のコンソール」
港町のル・アーブルに行ったから近親感がわくのかもしれない。港には
実際デュフィの絵のように旗がはためいていました。楽隊にも旗があった
ので。濃い青を中心にたくさんの色を柔らかくさわやかに使っている作品
と思いました。
デュフィがこんなにたくさんテキスタイルをデザインしているとは知りません
でした。これならば生活に困らなかったでしょう、と一安心しましたが(笑)
今でも通用する図案が多いですね。
デュフィいいですよ~、マティスとともにフォーヴを代表する画家です。とても軽くスラスラと描いたようにみえますが、デッサン等を繰り返し、構図や色のバランスをしっかりと計算した感じがします。故に本番では迷いなく一気に描き上げたというところでしょうか、苦労を微塵も感じさせないところが凄いです。習作からその苦悩や努力がヒシヒシと伝わってきました!!
>TaekoLovesParisさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
会場で、先日の「NHK世界遺産フランス縦断の旅」を思い出しました、パリからマルセイユでしたからね。(*^^*) フフ
テキスタイルはモダンなデザインで凄かったですね、ドレスまであるし。デュフィについてチョット詳しくなったかも(=^_^=) ヘヘヘ
昨年のルーヴル美術館展(横浜)では、最初の作品がいきなりアングルの《泉》で、正直、ビビリました・・・Σ(ノ°▽°)ノハウッ!今回も最初はビックリしましたが、その後の展示内容、流れを考えると、これもありかな~なんて思いつつ、やっぱり、もっとじっくりと観たいという思いが交錯して不思議な感じでした。
最初の作品に何を持ってくるかで、展覧会の充実度、気合の入り方、バランス感覚が推測されてしまいます。コレを決める人は大変ですね!!
もう一度見たいな、と思っていました。で、丁度、東京駅を通る機会があった
ので、寄りました。最高でした!がら空きですよ!金曜の夜6時頃。
メインの絵が「いらっしゃいませ」と出迎えてくれる感覚。玄関に飾ってある
絵ですね。すいていると、この展示位置がいいんですね。キューレーターの
人はすいている状態で見ているから。
私もブログにしました、でも不十分だから、ここにリンクをはらせていただき
ました。OKとおっしゃってくださるだろうと推測して。
デュフィは何度でも観たくなりますね!それなのに開催期間が短すぎます・・・
企画展の準備で休館中のようですが、ブリヂストン美術館(八重洲)の《ポワレの服を着たモデルたち、1923年の競馬場》という鮮やかな黄緑を主体とした作品もいいですよ~モデルの着ている服もナイス!!テキスタイルのデザインやドレスなど、今展覧会の意図と通じるものがあるお気に入りの作品です♪
水色がきれいですね。
楽器や家具とかの描き方もおしゃれだと思います。
でも、もう終わりなんですね!見逃しました(;_;)
デュフィいいですよ~♪音楽シリーズも好きです!!
(ブリヂストン美術館のオーケストラという作品がお気に入りです)
印象派やエコール・ド・パリを中心とした展覧会に2・3点展示されていることが多いのですが、注目していないと軽く流してしまうことが多い画家(作品)です。
いわき市立美術館のところに、この展覧会のチラシ(pdf)があり、そこにいくつかの作品がカラーで掲載されていますよ。
よろしければチェックしてみてください♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
私は春の「エコール・ド・パリ展」でディフィを気に入りました。
とっても素敵ですよね^^。
デュフィいいですね~癒されます♪
確か、春の「エコール・ド・パリ展」は病院のコレクションで普段は院内に展示されているものでしたよね。なんとなくですが、わかるような気がしますヾ( ̄ー ̄)ゞ