大エルミタージュ美術館展
東京都美術館で開催されている「いま甦る400年の記憶 大エルミタージュ美術館展 ヴェネツィア派からモネ、ゴーギャン、ルノワール、ピカソまで」を観に行きました。この展覧会は、『都市と自然と人びと』をテーマに、15世紀ヴェネツィア派から20世紀の近代絵画まで、総勢75人の画家たちによる油彩画80点を厳選し紹介するもので、400年にわたるヨーロッパ絵画を網羅する壮大な規模の美術展だそうです。
~展示構成~
Ⅰ.家庭の情景 Ⅱ.人と自然の共生 Ⅲ.都市の肖像
まずは《聖母子》、15世紀末のヴェネツィア派だそうです。聖母の優しい表情、衣装、とても繊細で素晴らしい。ポイントは金と青。柵が無ければもっと近づいてじっくりと堪能出来るのに・・・更に聖母の表情が優雅で素晴らしく、うっとりとしてしまうのが、ボニファーツィオ・ヴェロネーゼ《エジプトへの逃避途上の休息》。ヤーコブ・ファン・ロー《コンサート》はフェルメールに霊感を与えた作品だそうだ。Σ(ノ°▽°)ノハウッ!いろいろと複雑な意味を持つ作品のようだ。ピーテル・ヤンセンス・エリンハ《オランダの室内》は必見!!窓から差し込むに光の描写、そしてその光の反射によって新たにもたらされる陰影、額のガラスにうっすらと映りこむ女性の顔、椅子の影や物入れを照らす光・・・
この展覧会で一、二を争うお気に入り作品かも
クリスティーナ・ロバートソン《オウムと子どもたち》は、ロバートソンの作品の中でも最上のものだそうです。少女がとても可愛い♪(^_^)穏やかで優しい表情と輝くような瞳、ドレスの繊細な感じもナイス!!そして、オウムの質感。オウムがくわえるさくらんぼはチョット距離をおいて見ると、ものすごいリアルです。少年は女の子っぽい顔で優しく柔らかい表情だけれど、その視線には意思の強さを感じる。彼が着ているのは、ロシア貴族の子弟のために設立された陸軍学校の制服。
ギュスターヴ・ド・ヨンゲは《散歩の後》《窓辺の貴婦人(変わりやすい天気)》の2点。《散歩の後》は、若い女性が長椅子で休息している様子を描いたもの。図録の解説によると「若い娘が長椅子で体を休める優美でけだるそうな姿で表現されている」とあるが、少しだけ開いた扉から心地よいそよ風が吹き込み、長椅子でうたた寝している女性を穏やかに優しく包み込むようにも感じる。けだるそうとあるが、とても気持ちよさそう。繊細な白いドレスに青いリボンのコントラストが可愛く、とても素晴らしい!!《窓辺の~》も綺麗な作品。ともに光の表現が素晴らしい。
パスカル=アドルフ=ジャン・ダニャン=ブーヴレ《ルーヴル美術館の若い水彩画家》はルーヴル美術館で模写をしている若い女性を描いたもの。背景にあるのはヴァトー《シテール島への船出》(ルーヴル美術館蔵)、彼女はそれを扇に水彩で描いている。画家のドレスがとても優雅で繊細に描かれており、見応え十分。ピンク色のロココ・スタイルのドレスは、バラやカーネーションの花弁のように柔らかく優しくとても上品♪マリー・ローランサン《アルテミス》は、今まで持っていたローランサンのイメージからすると、意外性があり斬新。
ライスダール、ブーシェの作品は風景画好きにはたまらない逸品♪
ヤーコプ・ファン・ライスダール《森の中の小川》はとても穏やかで見応えのある素晴らしい作品。しかもでかい!!緻密な描写と繊細なタッチは必見!!混雑している状況ではなかなか厳しいが、離れて観ると一層素晴らしい。そして、大胆なコントラストが特徴の、フランソワ・ブーシェ《池のある風景》。こちらも穏やかな風景ではあるが、その色使いからか、木々に迫力と動きを感じる。ちなみに、「本作品はブーシェの作品の中では珍しい『純粋な』風景画」だそうだ。ギヨーム・ヴァン・デル・ヘキト《ケニルワース城の廃墟》は「人気の高いロマン派のテーマである永遠なる自然と廃墟-人生のはかなさや、むなしさの象徴-を扱っている。」とのこと。まさに、今展のテーマに相応しい作品の一つ。クロード・ジョゼフ・ヴェルネ《ティヴォリの滝》、ヨハン・クリスチャン・ラインハルト《理想的風景》も見応え十分で風景画好きにはたまらない作品。
ルートヴィヒ・クナウス《野原の少女》は女の子が可愛く、とても温かく優しい作品。今展覧会の図録は表紙が二種類あり、その一つがこの作品。私が購入したのもこちらのデザイン。ギュスターヴ・ドレ《山の谷間》は109×169.5cmと大きな作品。豪快でとても迫力があり、山の厳しさ、偉大さ、雄大さが伝わってくる。これだけ大きいにもかかわらず、緻密な描写と繊細なタッチは凄いとしか言いようが無い。雲のなんともいえない雰囲気がナイス!!この作品も離れてみるのがおすすめ。
クロード・モネ《ジヴェルニーの干草》、アルフレッド・シスレー《サン=マメスの川辺》はいけてなかった・・・(^_^;)展示室の最後、グッズ売り場の手前にビデオ上映がありましたが、その映像でみるモネ、シスレーの色合いは優しくとても綺麗でした。照明の影響でしょうか、難しいですね・・・都美HPの展示予定作品に以前は掲載されていた(いつの間にか消えた!!)、モネ《白い睡蓮》《庭の女》がありませんでした。《白い睡蓮》目当てでこの展覧会の期待値を5/5にしていたのですが・・・ウーム (; _ _ )/
ベルナルド・ベロット《エルベ川から見たピルナの風景》《ゼーガッセから見たドレスデンの旧市場》はいずれも大きな見応えのある作品。まず、《エルベ~》はとてものどかで、のんびりとしている。水面に映りこむ景色は優しくきれい。「・・・エルベ川の右岸からみたピルナのパノラマ画を3点描いた。その内の1点が本作品で、平坦な川岸と、川のゆったりとした流れを捉えている。穏やかな川面には、静かな地方都市のゆっくりとした生活の雰囲気が映し出されている。」とのこと。
昨年の「ドレスデン国立美術館展」で《ポスタの近く、エルベ河右岸の街道から眺めたピルナ》という作品が展示されていました。構図は違いますが、描かれている建物は同じもののようです。カンヴァスのサイズもほぼ同じ。《ゼーガッセ~》は、圧倒されたというか、唖然としてしまいました・・・(◎-◎;) ドキッ!!何人いるんだ???ベロットという画家は完璧主義者で妥協を許さないようだ・・・もし、私がこの作品を描いたら(模写をしたら)、ブチッ!と逝っちゃいます・・・(^_^;)ついでに、ルカ・カルレヴァリス《デンマーク王フレデリック4世を讃える大運河のレガッタ》も。見応えはあるが、見るだけで十分という感じ。
フェリックス・ジーム《ヴェネツィアの風景》は空の青がいいね~(^o^)丿すぅ~っと心が晴れる。しかもかっこいい!!エドモン=ジョルジュ・グランジャン《エトワール広場から見たシャンゼリゼ風景》も。ともに、写真のように綺麗♪《エトワール~》は動きがあって面白い。《ヴェネツィア~》は静、《エトワール~》は動。ともに見応え十分。シャルル・コッテ《海から見たヴェネツィアの眺め》は燃え上がるような、沸き立つような素晴らしい作品。水面が特に素晴らしい。
アンリ・ルソー《リュクサンブール公園、ショパン記念碑》は不思議な構図だ。右奥へと続く道は、チラシなどで見たときは普通に奥に伸びているだけという感じだったが、実物をみると上り坂になっているようだ。道に沿った木々の根元の様子からするとね・・・(それとも技術的なもの???)この作品は、正確に描写したわけではないそうだ。「カンヴァスの裏には画家自身の手で、『コンポジション』と書かれているが、これはこの作品がアトリエ内で制作され、写生されたものではないことを示している。」とのこと。アンドレ・ドラン《水辺の家》は洪水の様子を描いたものだそうだ。澱んだような、まどろんだような乳白色や緑、茶の色彩が面白い。キュビスム的に省略された建物の構図や水面に映る建物の描き方も(^o^)丿先日の「ピカソとモディリアーニの時代展」のブラック《家と木》と並べて鑑賞したくなる。もちろん、セザンヌもいっしょに。モーリス・ユトリロ《モンマルトルのキュスティン通り》は構図、色使い、ともに巧みだ。でも、やっぱり寂しい・・・休日のオフィス街の早朝のように、スッキリとしてはいるが冷たく孤独な感じ。
風景画好きにはなかなか見所の多い展覧会だったように思います。最初に肖像画が集中していたため、肖像画が好きな方は前半だけで飽きてしまうかもしれませんね・・・(^_^;)知らない画家や今までに2,3点しか観た事の無い画家の作品が多数ありましたが、いずれも素晴らしい作品でした。『都市と自然と人びと』というテーマでの大規模な展覧会は難しいですね、全体的に地味です。宣伝で煽りまくっているだけに、より一層、地味に感じてしまいます。ウーム (; _ _ )/展示構成にももう少し工夫があったら良かったのに・・・
B1から1Fへ上がる階段のところにエルミタージュ美術館の階段をイメージしたパネルがありました。だまし絵のようで間違えちゃいそうです。(/ \) イヤンまた、その頭上にスクリーンを設置し、エルミタージュ美術館の映像が流されていましたが、これは、階段をのぼって上から見ることをお勧めします。階段下の椅子に座った状態では、チョット見辛いと思います。1Fデッキのところは、普段は椅子が並べられて休憩場所となっていますが、今回はありませんでしたので、スクリーンの正面で上から軽く見下ろすように見るといいと思います。特にラファエロの回廊の場面では、すぅ~っとスクリーンに吸い込まれるような錯覚に陥りますよ♪本当に回廊にいるみたいに気持ちが良かったです(^o^)丿
- 図録:2000円(表紙のデザインは2種類)
- 音声ガイド:500円
東京都美術館(http://www.tobikan.jp/)
日本テレビ:大エルミタージュ美術館展公式サイト(http://www.ntv.co.jp/hermitage/)
【東京展】 東京都美術館:2006年10月19日~12月24日
【名古屋展】 名古屋市美術館:2007年1月5日~3月4日
【京都展】 京都市美術館:2007年3月14日~5月13日
この記事へのコメント
りゅうさんのレポにはいつも感心されます(尊敬!)
私はいつも感覚的な見方で、その絵の前で感じたことが帰ってくると変わっていたり…。
こういう風にわかりやすくレポできませ〜ん(;_;)
「白い睡蓮」 はプーシキン美術館展でまわっていたんではないですか?都美術館の所蔵だったんですか?でも、どこにいったんでしょう?睡蓮の中でも一番ぐらいの絵ですよね。
行くのが楽しみです。りゅうさんの解説を展覧会から帰ってきて、もう一度
じっくり読むのが私の至福のとき。「え~っ、気付かなった」とか「そうそう」って
うなずいたり、とか。
だまし絵の階段でひっくり返らないようにしないと(笑)
昨年のプーシキン美術館展からのサイト更新ミス!?
《庭の女》は何処へ・・・ププッ ( ̄m ̄*)
来年1月からはココでオルセー美術館展、4月には新国立美術館(乃木坂)でモネ展が開催されるそうです。楽しみはとっておきましょう!!(^_^)/
>TaekoLovesParisさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
知らない画家との出会いは新鮮でいいですね!
コレクターや展覧会企画者のセンスが最も反映されるのは、
個人的には、この部分だと思います。
見応えのある展覧会でしたよ、地味ですが。(=^_^=) ヘヘヘ
Taekoさんの感想、楽しみにお待ちしております♪(^_^)/
だからベルナルド・ベロット、いいですねぇ☆彡
あんな絵を新居に飾れたら。。。な~んてこと考えちゃいましたっっ(無謀)(笑)
私も風景画が好きなんです(^_^)/
空や海の青さ、木々の緑を、何も考えずにボケェ~っと眺めるのが一番♪
混雑しているとなかなかそうもいきませんが。
お気に入りは何でも飾っちゃいましょう!!( ̄ー ̄)v
りゅうさんの感動がひしひしと伝わってきますた~(^_^)
パスカル=アドルフ=ジャン・ダニャン=ブーヴレの背景に描かれている
ヴァトー《シテール島への船出》が気になります。
ドビュッシーのピアノ曲『喜びの島』はこの絵からインスピレーションを得たというもの。その曲を弾くときに何度となく画集でお目にかかりました~。
背景にいとも簡単に(?)それを描いてしまうなんてすごい!
実物もみたいけどこれ目当てに行っちゃおうかなぁ(^_^)
TBありがとうございました!
オウムと女の子の絵、ちょっと不思議な印象受けました。
オウムと女性が一緒に描かれていると、その女性は
とっても性に対しておおらな人ってこと表すそうですが
この絵だとそんな風には見えませんよね。。。
絵の中の絵は、模写とは違った面白さがありますね。
ドビュッシー、音声ガイドのBGMとしてよく使われていますね。
「ロダンとカリエール展」の音声ガイドでも使われていたようですね、ロダンと交流があったそうです。
ぽんこさんはピアノ弾きですか♪♪♪~~~そういえばなまちゃんも・・・。
上野はダリ展もありますよ~(^o^)丿
>Takさん、こんばんは。TB&コメントありがとうございます(^o^)丿
なるほど~そう考えると不思議ですね。
ん~、女性の視点から描いたからでしょうか、対象も子供の日常という感じですしね。彼女はモデルを理想化して描くスタイルが皇帝一族や貴族から好評で、肖像画家としてとても人気があったそうです。
この絵も5割増ぐらいになっているのかも知れませんね!!ププッ ( ̄m ̄*)
それにしても、立派で可愛いオウムですよね、オウムもいいな~(^o^)丿
(以前、セキセイインコを飼っていました。)
オカメ、ボタン、オウムどれも可愛くて魅力的です♪(*^m^*) ムフッ
私も行きました。でも説明が短いので、りゅうさんのココを読んでほしいなと
思い、リンクをはったつもりがうまくいってないようで。。あとでなおしますが(今は仕事に行かなくちゃ)、トラックバックを私のところにつけてください。
了解しました。
TBさせていただきます( ̄ー ̄)v
ようやくエルミタージュ美術館展の記事をアップしました。
記憶力との勝負でした~(とほほ)
今回は知らない画家の作品も多かったので、またまた新たな発見がありましたので面白かったです。
ですが展覧会のテーマ設定は広範囲すぎて、どうとでも取れるものですよね?実際に絵を見ている際にはそんなに気になりませんでしたが、改めて記事にしてみるとなんだかな~?と思ってしまいました。
私は月並みですがゴーギャンが良かったです(≧▽≦)
確かにテーマ設定広すぎますね。
何でもありという感じで、ちょっとずるいな~というのが正直なところです。
私も知らない画家が多く、とても新鮮に感じました~(^_^)/
「お、ゴーギャ~ン♪」と山口智子が特番で言い放ったのが印象的でした。
会場でゴーギャンをみたときも、真っ先に山口智子の顔が浮かんで・・・(^_^;)
やっぱり、「お、ゴーギャ~ン♪」と言いそうになりました♪
(第一印象ってこんなもんなのかな???)
私も「オランダの室内」が気に入りました。「野原の少女」も愛らしくて素敵。
「オランダの室内」は細部まで見応えありましたね~
特に光の描写は凄かった~
図録の表紙は「野原の少女」を選びました♪(^_^)