ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン

ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン (エクス・リブリス)
- 作者: ポール トーディ
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2010/08/17
- メディア: 単行本
新聞の書評で興味を持った本です。
読売新聞の書評
(http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20101004-OYT8T00354.htm?from=any)
酒に溺れ、人生を破滅させる男の話。
2006年から始まり、2004年、2003年、2002年と年(ヴィンテージ)を遡る。
何があったのか、何故そのようなことになったのか、
そもそもワインとの出会いは。
疑問に答えるかのように遡って展開。日本語タイトルにはヴィンテージワインとあるが、
別にワインが悪いわけではない。
たまたまワインだっただけ。
ウイスキーでもテキーラでも焼酎でも結局は同じこと。
アル中。
酒との出会いが、人生を変え、そして狂わし、すべてを破壊していく。
酒のために妻をも死に追いやる。
実質的には彼が殺したも同然。
それでも、責任転嫁、自己弁護に終始する。
ただし、酒との出会いが無かったら、彼女との出会いも無かった。。。
「・・・キャサリンが言ったことを思い出した。それほどまえではなく、彼女が死んだあとだ。『あなたはわたしたちのどちらかを選ばなくてはならないの。わたしを選ぶか、それともワインを選ぶかしなければならないの。』
一か月か二か月まえにも似たようなことを彼女は言った。あのとき彼女はまだ生きていて、僕たちはいっしょにパリにいた。そして僕は彼女にこう言った。『僕はもう君を選んでいるよ』でも、人生というのはそれほど単純なものではない。選択というのは、決してそうあってくれたらと思うほど簡単なものではないのだ。現実世界というのは、想像以上に複雑なのだ。ときには妥協も必要なのである。
僕はシャトー・タルボを一杯注ぎ、グラスのなかでワインを回して、ブーケを放たせた。古かったが、まだ飲めそうだった。グラスを掲げてから一口飲んだ。声に出して言った。『僕は君を選ぶよ、キャサリン、そして僕はワインも選ぶ』(P182)」
真面目で外の世界を知らない男にあまりにも短期間に様々なことがおき、
適応・順応できなかったことが原因か。
終いには
アル中による痺れ、内臓破壊、妄想、幻覚が彼を襲う。
生活も破綻する。
それでも彼は呑み続ける。
もう何もかもがわからなくなるほどに。
他人からみれば、堕ちた、破綻した、破滅したということなのかもしれないが、
彼にとっては、ある意味、とっても幸せなことのかもしれない。
本当に好きなことを見つけ、その世界に没頭し、
その世界と一体になれたのだから。
「 アンディはそのためらいに気づいた。そして身震いにも。彼は言った。『君は友情ってものがわかってないんだな、ウィルバーフォース、そうだろ?僕は君を信頼しているが、君は僕を信頼する必要はない。そういうことか?君はそういう考え方をするのか?僕は日に十二時間君のために働いてる。僕は事実上社交なんてことはまったくしていない。一方君といえば、毎晩六時になると、どこかのワイン商の友人と飲みにぶらぶら出ていく。けっこう。あのなあ、君が組み立てられたときにな、ウィルバーフォース、何か部品が抜けてたんだよ。それが何か僕にはわからない。でも、君には何かが欠けてる。君はまともじゃないんだ。もっとまえに気づくべきだったよ』(P267)」
「僕は大学を卒業しなかった。あまりにも早く知識を吸収してしまったため、たちまち講師の大部分よりも物知りになってしまったのだ。少なくとも自分に興味のある事柄については。一年半後に僕は大学を中退し、ある講師の援助で、コンピューター室の『もう使わない』機器をごっそりと譲ってもらい、自分の事業を始めた。(P320)」
そういえば、日本でも似たような人がいましたよね。
ⅠT業界で一時代を築いた(一騒動起こした)金の亡者・拝金主義者。
外の世界を知らないオタクが、突然外の世界と接触し(ディープインパクト?)、
自らの立ち位置を失い、判断力を失い、そして・・・
大学では技術的なこと以外にも学ぶべきことがあったはず。
故に・・・
「封を開けたワインがたちまち劣化しはじめるように、殻に閉じこもっていたあいだは平穏無事にオタクでいたウィルバーフォースという人間の中身は、いったん栓を抜かれて『世間』の外気に触れたとたん劣化しはじめ、一直線に破滅へと向かう。彼の選択は、なぜかことごとく間違っているのだ。宿命というか『悪い血』というか、そんなものに引きずられて堕ちきった彼の姿を冒頭で見せられている読者には、最後のところで彼を包む希望の光はなんとも痛ましく思える。あまりに明るくて、哀しい。じつに底意地の悪い作者である。(P377 訳者あとがきより)」
ウィルバーフォースとフランシス・ブラックの奇妙な因果。
ワインによって人生を大きく変えることとなった男、フランシス。
彼の人生の結末を冒頭(2006年)で見せつけられているだけに、
特に彼の生い立ちには、なんとも複雑な、それでいて不思議な因果関係を感じる。
2006年のアル中のグダグダな状態に嫌気が差したが、
そこを乗り越えてから、2004年以降は、ついつい夢中になって読んでしまった。
なかなか読み応えのある本。
ワインに例えるなら、フルボディかな?(^_^;)

ポケット・ワイン・ブック 第8版 (ハヤカワ・ワインブック)
- 作者: ヒュー ジョンソン
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/25
- メディア: 単行本

ワインの帝王ロバート・パーカーが薦める世界のベスト・バリューワイン
- 作者: ロバート M.パーカー Jr.
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/11/25
- メディア: 単行本
ボルドーのワインを中心にたくさんのワインが登場する。
そのほとんどの名前を知っていたことには自分でも驚いた。
もちろん飲んだことの無いものばかりだけど。
この記事へのコメント
ワインを飲まないなぁ~。
どちらかといえば赤が好き☆
福袋で買ったワインがとっても美味しかったです^^
ポンッ☆ ってシャンパンで乾杯ですね♪
ネコラベルのワインかな?(^_^)
○kuwachanさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
福袋ワイン、お得感もあって楽しいですよね♪
ついつい飲みすぎちゃいそうです。(^_^;)
毎日4,5本飲むと、この本の主人公になっちゃいます。
お気をつけください。(@_@)
○りんこうさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
○いっぷくさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
○にいなさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
この本に捕らわれてしまったのは、なぜなのか?と、リンク先の新聞の書評を読んでみた。うまい書き方ですねー。これなら、私も買っちゃうかも。
アル中ね~、まわりは迷惑でも本人は楽しいのかも、って思いました。
少し酔った状態って、新しい世界が開けてきそうな感じがしませんか?
頭の回転が良くなって利口になった気もしてくるしー(笑)。すべてが
楽しいもの。ありゃ、これじゃ、アル中候補生みたい。
ところで、ホリ○○○もワインが好きだったんですか?
で、りゅうさんは、どう?アル中になる可能性は?
グレートヴィンテージのペトリュスを2本あける度胸はありませんが、
それができちゃったら死んでもいいかも♪
アル中の人は、自分がアル中だということを認めないそうです。
あ、私はアル中ではありませんよ。本当に。
さぁ、無限ループ突入♪
否定すればするほど、どんどんアヤシクナリマース! (*/∇\*) キャ
○poyoyonさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
りゅうさん、ご用心(笑い)
「酒と薔薇の日々」、タイトルは聞いたことがあります。
映像となると、生々しそうですね。
でも、ちょっと気になります。
私はアル中ではありませんよ。本当ですよ、本当に。
本当だってば~~~~~~~~っ! (/ー\*) イヤン♪
○miyokoさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
おそらく、自分はまだアル中にはなってないとオモイマス。十分に予備軍でしょうけど(笑)
最近、行きつけのレストランでときどきワインを飲みますが、色々とお勧めしてくれるんですが、味の差がわかりません(笑)
はい、アル中の方は、皆さんそうおっしゃいます。
「アル中じゃない」とか「まだなってない」と。(* ̄m ̄) プププッ
オトーリの回しすぎにはくれぐれもご注意を。
視覚、嗅覚、味覚・・・人間の記憶なんて曖昧なものです。
2、3種類並べて交互に飲み比べてみてください。
飲み比べることで、色合い、香り、味わい、それぞれの個性がはっきりとして、違いがわかるようになると思います。
ワインに限らず、ビールでも日本酒でも焼酎でもウイスキーでも♪
ぜひお試しを。
おっと、これじゃあ、飲みすぎ街道まっしぐらですね♪(/ー\*) イヤン♪
○mickyさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
○伽耶さん、nice!ありがとうございます(^o^)丿